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アンラッキー
ペナンでチケットを買うとき、VIPバスと言われた。
マレーシアで何度もバスに乗ったことのある相方曰く、

「マレーシアのバスはタイよりも全然いいよ」

タイのVIPバス並のものが、こちらでは普通だそうだ。
キャメロンハイランドまでの道は、60kmヘアピンカーブの連続らしいが、
そんなバスなら酔う心配もないだろうと、安心していた。
しかし実際のバスは違ってた。
バスターミナルに立派なバスが行き交う中、1台のオンボロバスが止まった。

「まさかこれじゃないよねー」
「こんなボロは乗ったことないよ」

こんな会話を交わしていたが、このバスだった。
ただのボロいエアコンバス。
窓は狭く、座席も窮屈。これのどこがVIPなんだ。
どうやらチケット売りのおばさんは、「BIG BUS」と言ったらしい。
じゃあ間違いじゃない。一応でかいから。
・・・って納得してる場合じゃない。
いやだなー。大丈夫かなこんなので。
しかし心配は現実となった。

高速を走っていると、突然「ガコンッ!!」
ものすごい大きな音がした。
何か落としたのかと思って、後ろを見ると、道路上に大きな黒いものが落ちていた。
後方のトラックもパッシングしてるし、他の後続車は、みんな隣の車線に移動してる。
まさか荷物入れに穴があいて、うちらのバッグが投げ出されたんじゃ・・・
バスが止まったので、外に出て確認してみた。
乗客もみんな何が起こったのかと、外に出てきた。
みんなタイヤを見ている。
私も見てみると、タイヤが花が咲いたように、ボロボロになっていた。
大きな石を踏んじゃったらしい。

「このままじゃ走れないよなー。別のバス手配すんのかなー」

そんな不安をよそに、バスはめでたく出発した。
しかし途中休憩のバスターミナルで、1時間以上も待たされて、別のバスに乗り換え。
なぜかノン・エアコンバスに変わってた。
キャメロンハイランドには16時についた。3時間遅れで。


3日後、キャメロンハイランドでの涼しい生活に別れを告げ、クアラルンプールに向けて出発した。
このときのバスも行きと同じオンボロバス。
いや、さらにオンボロだった。
だってバスの右後ろがどっかにぶつけたのか、穴があいてガラスも割れてる。
これじゃエアコンすら効かないぞ。

バスは30分遅れで出発。
30分位して、車内が排気ガス臭くなった。
後ろの穴から、まともに排ガスが入ってくる。
エアコンなしのバスなら窓が開けられるが、エアコンバスだから窓は開かないわ、
そのくせエアコンは壊れてるわで、換気がまったくできない。
臭さも並じゃない。エンジンもおかしいようだ。
だんだん車内が、ガスで白くなってきた。
このままじゃ一酸化炭素中毒で死んでしまう。
保険金は降りるかな?

「ストーップッ!!」

後方の席の人達がたまらず叫んだ。
バスが止まって、みんな降りた。
みんな口にハンカチや布を当てている。
運転手が修理らしいことをした。
直ったのかどうかもわからないが、バスは発車した。
穴をふさいでないので、車内がまた臭くなるのも時間はかからなかった。
すぐに、

「ストーップッ!!!」

これが2回目。
3回目はとうとうバスは本当に止まってしまった。
というよりも、乗客が耐えられなくなった。
まあ、あのまま乗ってたら、後方からバタバタ倒れていくだろうなー。
そのくらい臭かったんですよ。
演歌のスモーク並の白さだったし。

止まったところは、ふもとの町まで20km以上ある山の中。
今日に限って快晴。日陰になる木もない。
向かいの茂みで、ヤギの家族が草食ってるだけで、あとは何もない。
歩くには遠すぎるし、キャメロンハイランドにも戻れないし、仕方なくここで待つことになった。
でも女の子2人組は、歩いて山を降りていった。
時間に追われることがあるのかもしれない。
例えば、今日飛行機に乗るとか。
こういうこともあるから、余裕を持って行動した方がいいですね。

さて、なーんにもやることがない山の中。
運転手はいつのまにかいなくなり、車掌もヒッチハイクして消えてしまった。
わー!うちらはどうなるんだ?
このまま置き去りか?
それでもみんなはマイペース。のんびり待ってる。
中には熟睡してる人や、壊れたバスの中で、持参した弁当を食ってる人もいた。
用意がよすぎるぞ。おい。
1人のインド系のおばちゃんが、

「うちらはみんなツイてないねー」

と言った。そうなんだよ。行きも帰りもツイてない。
ホントにバスは来るのかな?
ひまだなーと思ってたら、いつのまにか子ヤギがそばにいた。
じゃあ子ヤギと遊ぼうか。
草を引っこ抜いて、子ヤギのほうに近づける。
しかし子ヤギは見向きもしない。
パンを食べてる女の子のほうには、寄っていくのに。
草よりパンが好きな贅沢なヤギだ。
女の子は最初はパンをあげてたが、あげるのに飽きたら、石を投げつけ始めた。
子ヤギはピョンピョン跳ねながら逃げ惑う。
用がなくなると石を投げつける等の虐待は、マレーシアでは誰でもすることのようだ。

キャメロンハイランドの宿は、猫を飼っていた。
身重の猫で、大きなお腹を揺らしながら寄ってくる。
ある日はいつもよりも、ニャンニャン激しく鳴きながら寄ってくるので、家族がスリッパを持って追いかけ始めた。
翌朝、猫は4匹の子猫を生んでいた。。
昨日の鳴きの激しさは、もうすぐ出産だから落ち着かなくて鳴いてたのだ。
それなのにスリッパで追いたてられて、かわいそうになー。
ちなみに生まれた子猫は、1匹も夫猫に似ていなかった。
妻の浮気か?

話はそれたが、みんなが子ヤギに石を投げ始めた。
いつまで待ってもこないバスにムカついて、子ヤギに八つ当たりを始めた。
それにもめげず、ヤギは近くにいる。家族のヤギも近くに来ていた。
ヤギに相手にされない私は、もっと優位に立てるものを標的にすることにした。
アリだ。
アリならいじめられるぞ。ヤギのうっぷんをはらしてやる。
山アリはでかい。日本のよりもでかい。体長1〜2cm。
見るとアリは、せっせと白い物を運んでいる。
パンだ。
ヤギと女の子が食い散らかしたパンだった。
自分の体以上の大きさのパンを、みんなでえっさほいさと運んでいる。
アリは食べるものがあるのに、私にはない。

「ちくしょー。水ですらあとちょっとしかないのに、こいつらはたらふく食べられるんだ」

そんなことを考えながら、アリへの攻撃開始。
持ってる草の茎で運搬の妨害。
アリはなかなかパンを離さない。
結構手ごわいな、コイツ。
周りを見ると、みんなパンを運んでる。
ますますムカついて、攻撃対象を全部に拡大。

【攻撃目標】
・アリ

【作戦コードネーム】
・モハメド・アリ

【作戦内容】
1:救援物資の運搬妨害
2:敵の全滅
3:単なる時間つぶし

この作戦でアリを次々撃退。
アリも勇敢だった。
死んでもパンを離さない覚悟で、食らいついてくる。
ホントに死んじゃったけど。
うーん。いい戦いだった。どうだ。参ったか。人間の方が強いんだぞ。
わーい。わーい。

・・・こんな寂しい1人遊びをしてたら、バスがきた。
時間を忘れて、VSアリに没頭してたらしい。
みなさんも暇なときやってみてください。
アリ以外でアレンジすると、もっと楽しいかも。
沖縄だったらハブ、アフリカだったらライオンとか、土地によってアレンジしましょう。

バスの方は、今度は壊れてないようだ。
どこかへ消えてた運転手も、いつの間にやら戻ってきた。
この日も3時間遅れで、クアラルンプールに着いた。


【結論】
クアラルンプール・ペナン⇔キャメロンハイランドのバスはオンボロバスです。
ラオスよりもいいですが、オンボロです。
これから行く人は、時間と心に余裕を持っていってください。


【おまけ:暇つぶしあれこれ IN 山の中】
・周りの人としゃべる
・寝る(道路上は危険!)
・芝刈り(川へ洗濯でも可)
・妄想にふける

2000/8/14

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