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白いパンツとパムッカレ
パムッカレとは、トルコ中西部に位置する天然の石灰棚でできた温泉がある有名観光地だ。
崖が石灰で覆われており、遠くから見るとまるで雪山のような光景だ。
トルコの水は石灰成分が多く含まれているので、やかんやなべを使っている間に、
白い塊がこびりついてしまう。
この現象をもってできあがったのが、パムッカレの石灰棚だ。
自然にできた石灰棚プールにお湯が溜まり、空の青と同じ青い色のお湯が、
石灰の白さと相成って非常に美しい。
・・・という写真を見て楽しみにしていたのだが、実際は干からびていた。
近年観光開発が進みすぎて、周辺のホテルがここの源泉を引くようになり、
その結果、パムッカレの方の温泉が減ってしまったからだ。
干からびた白い棚の一部には、お湯が溜まっているが、機械かなんかで管理されててつまらん。
洗濯機の排水パイプみたいなのがにゅーっと出てると、せっかくの雰囲気が台無しだ。

それでも頂上の方には、観光客向けにお湯に浸れるスペースがあった。
今は冬なので足のみだが、それだけでもいいから入りに行こうとした時、私はっとした。

ストッキング履いてた。

しまった。うかつだった。
パムッカレに来てストッキング履いてるなんて、スキー場に来てうっかりまわしを締めてきたようなもんだ。
(しまった。脱げない。ってことで同じ穴のムジナ)
そう比喩してみると、なんてアホなことをしてしまったんだと自己嫌悪に陥った。
せっかくここまで来てるのに、お湯に浸からないで帰るなんて、末代までの恥になりかねん。
しかしいい場所を発見した。
それは石灰棚のど真ん中。
だけど、ちょうど棚の重なり具合が死角になり、下からも上からも覗けない絶好のポジションだった。
これには、最初はさすがの私も躊躇した。
いくら立ちション経験済みとはいえ、世界遺産の上で半裸になるのは気がとがめる。
いつ人が来るかもわからないし、もしかしたら望遠鏡見てる奴がいるかもしれないし。
ここで良識ある人間なら、「またパムッカレに来ればいいか」ってことで終わるかもしれないが、
私はもう二度と来ないかもしれないし、いつ死ぬかわからないから、脱ぐしかないなと決心を固めた。
気分はヘアヌード写真集出版を決意した元アイドルだ。

まず最初は靴下。
毎日寒いので靴下とストッキングの重ね履きをしているが、たまにストッキングとタイツの
2枚履きをしていることもある。
しかし2日前にタイツが伝線してしまい、今日は1枚オンリーだ。良かった。
素早く靴下のみ脱いで、ジーンズに手をかける。
ジーンズもとっとと脱いで、一気にストッキングを脱ぎ去った。
なんかケツが寒いなーなんて思ってたら、ここでもう1つ気付いた。

穴開きパンツだった。

どうりでスカスカするわけだ。風通しがいいはずだ。
まともなパンツで見られるのと、白い穴開きパンツのまま誰かに見られるのでは雲泥の差だ。
こりゃいかんと急いでジーンズを履いた。
時間にして1分程のことだったが、外で半裸になるのは結構ドキドキするもんだった。
いつ誰に見つかるか。見つかったらどうしよう。ちょっと恥ずかしい。でも・・・
・・・というドキドキが快感に変わると、立派な露出狂になるわけだ。
あいにく私は快感には至らなかったので、犯罪者にならずに済みそうだ。


これを書いててある友人を思い出した。
札幌に『モエレ沼公園』というイサム・ノグチの設計した広大な公園があるのだが、
ここは夕方になると門が閉まり閉鎖される。
だから夜、3人で裏口から忍び込んだ。
何をしに行ったかというと、ここにあるピラミッドに登るためだ。
その日は月がきれいに出てて、月明かりにぼんやり浮び上がるピラミッドは、空想の世界のものに見えた。
それに登ろうとしたが結構な高さがあり、運動不足の私は、息を切らしながら途中でギブアップ。
友人がピラミッドの上から戻ってくるまで下を散歩していた。
彼が上から戻ってくるなり一言。

「いや〜。思わずてっぺんでションベンしちゃったよ」

私はしばらく呆気にとられていたが、大好きな公園を汚された思いで問いただした。

「なんでわざわざ頂上でするの?下でやりゃーいいでしょう。下の方が草むらあるんだし」
「だって月がきれいじゃないか」

太陽が黄色かったから人殺したんじゃなくって、月がきれいだから立ちションしたって、あんたは異邦人か!
そういうツッコミもしないまま公園を後にしたが、今となっては笑える話だ。(いやどうだろう)

彼は街を見下ろす高さで、月を見ながら立ちションをした。
私は町を見下ろす高さで、石灰棚を見ながらストッキングを脱いだ。

やった行為は違うにしろ、大差がないように見えるのは気のせいだろうか。
ふとそんなことを考えた。

2001/1/30

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