カイロのサファリホテルで聞いた噂の1つに、
「スーダンの日本大使館は、大使自ら出迎えてくれて、
コーラも出してくれるらしい」というものがあった。
うわさというものは大体元ネタからかなり軌道がそれた後、耳に入るもんで、
「あの子、ちょっと元ヤンぽいよね。あのマユの抜き具合」
程度のうわさが、いつの間にやら
「あの子、族のアタマはってたんだってー。地元じゃ知らない人はいないってさー。あれじゃ親も泣くわけね」
まで変化することも珍しくない。
スーダンの大使館も御多分にもれず、そういううわさの類であろうと思ってはみたものの、
コーラを出してくれるという行為が心のどこかにひっかかり気になっていた。
スーダンといえば、旅行者の間ではエチオピアに行くための、
もしくはエジプトへ行くための通過国としての認知度があるのはまだ良い方で、
旅行しない人、地理嫌いの人、アフリカという国があると思ってる人にとっては、
それすらない。
はっきり言って無名国だ。
そんな国に大使館があるのも驚きだ。
先程書いたように、スーダンはただ通り抜けるための国とあるが、
それは見所がないのが大きな原因だ。
一応メロウェのピラミッドなるものがあるが、
エジプトでピラミッドを見た人には用がないものだ。
あと見所じゃないけど、人が良い。
これはスーダン人に「エジプト人か?」と聞くと、
「エジプト人と一緒にするな」と言うくらい、人柄が良い。
これはスーダン唯一のとりえと行った方がいいかもしれない。
まあ、この2点だけじゃ旅行者は寄りつかないわけだ。
ということは、大使館を訪れる人も必然的に少ないわけで、
大使館も暇をもてあましてるに違いない。
だから時々訪れる日本人旅行者を、そこまで歓迎してくれるのではないだろうか。
さてそういう推測に至ると、
ぜひとも大使館へ行ってみたくなるのは人情というもの。
そしてあっさりスーダン行きの立派な主要目的になってしまった。
ハルツームに着いて4日目、大使館行きを決行。
門の中に入り、セキュリティー・チェックを終えて待っていると、
ヒゲの生えた偉そうなおじさんが出てきてベンツに乗り込んだ。
あれ?今のが大使じゃないのか?
だとしたら『大使自らお出迎え作戦』はもう失敗だ。
しまった。
しかし気を取り直して中へ潜入。
まずは用件を伝える。
コーラを頂くという当初の目的だけでは、取り次いでもらうことも難しいため、
まずはそのきっかけとなる大切な用件を伝えた。
その用件とは、「エイトリア大使館へのレターが欲しいんですけどー」だ。
とっさに思いついたのではなく、本当に行こうと思ってたのだ。
現地職員にその旨伝えると、日本人が出てきた。
「君たちエリトリアの状況知ってるの?」開口一番言われてしもうた。
そして「ここじゃなんだから」と言って通されたのは大使館の中だった。
続いて彼の口から出たセリフは、
「何か飲む?コーラ?紅茶?コーヒー?」
うわー!ついにきたー!!さっそく洗礼のコーラ宣言。
こんなに簡単にコーラをゲットできていいのだろうか。
という遠慮がちな思いと裏腹に、私の口から出てきた言葉は、
「じゃあコーラを」
全然遠慮してない。
そして出てきたコーラは冷え冷えの1本。
プハーッ。うめえ。
この1本のために大使館に来たんだなー。
じゃあ第1の目標は、大使じゃなかったけどとりあえず達成したから、
さて帰るかと思ったら、エリトリアの危険度の話が始まった。
そうだった。
エリトリアのビザを取るための、レターをもらうのが建前上の目的だったんだ。
エチオピアとエリトリアはずーっと戦争してたんだが、
一旦終わっても、まだ火種がくすぶっていて、
国境付近は危険度5が出ているから行くな(とは強制してないが)とのこと。
ってコトでエリトリア行きはボツ。
エリトリア話はその辺で終わって、その他の色々な話をした。
大使館員・キヨノさんは、スーダンに来て2ヶ月。まだ日も浅い。
「スーダンって何か遊べる所あるんですか?」の問いに
「・・・何もない。」
「じゃあおいしいレストランは?日本料理とか・・・」
「1軒韓国料理家があるけど、これが?って感じ。高いし。」
どうやらつまらないらしい。この国。
日本人はスーダン国内に30人いるが、その内8人は大使館員。
人数も少ないから、みんな顔見知りということだ。
やっぱ、日本人率が少ないから、
久々に会える知らない日本人と話すというのは、
在住者にとって新鮮なのかもしれない。
だから仕事中なのに1時間以上も相手をしてくれたのではないだろうか。
キヨノさんの任期はあと2年。
ワープロの感熱紙が売ってないとか、娯楽がないとかで、
すでにイヤそうなキヨノさん。
彼はあと1年10ヶ月、スーダンに耐えられるのだろうか。
私は耐えられないな。
がんばれキヨノさん。
もうすぐ砂嵐の季節だ。